転職先が決まっている場合は、転職先の労働条件を書面で確認し、入社日から逆算して現在の会社へ退職を伝えるのが基本です。無期雇用なら法律上は原則として退職の申出から2週間で退職できますが、就業規則や給与の締め日、引き継ぎ、有給休暇の取得を考えると、1〜2か月前を目安に相談するケースが多くあります。
ただし、転職先の内定を口頭で聞いただけの段階で退職を伝えるのは避けましょう。雇用契約書や労働条件通知書などで、入社日、給与、勤務地、雇用形態、試用期間などを確認してから手続きを進めると安心です。
退職を伝えるタイミングは「転職先の入社日」から逆算する
退職を伝える時期は、転職先の入社日と、現在の会社の就業規則・雇用契約によって決まります。まず入社日を確定し、そこから退職日、引き継ぎ期間、有給休暇の取得日数を逆算します。
たとえば、転職先の入社日が4月1日で、有給休暇を10日使い、引き継ぎに3週間必要な場合は、3月31日を最終在籍日とするのか、有給休暇の開始日を退職日とするのかを整理して、早めに上司へ相談します。
無期雇用の場合は法律上の期間と会社のルールを分けて考える
期間の定めがない雇用契約では、民法上、退職の申出から原則2週間が経過すると雇用契約が終了します。一方、就業規則で「退職の1か月前までに申し出る」などと定めている会社もあります。
法律上の期間だけを見て直前に申し出ると、引き継ぎや社内手続きが間に合わない可能性があります。まず就業規則を確認し、可能なら退職希望日の1〜2か月前に上司へ相談しましょう。
月給制でも給与の締め日によって扱いが異なる場合がある
月給制の従業員については、給与の締め日との関係で退職の申出時期が問題になることがあります。退職日を月末にするか、給与締め日に合わせるかで、社会保険料や給与の扱いが変わる場合もあります。
具体的な退職日の決め方は、就業規則と給与担当部署の案内を確認してください。自分だけで判断せず、転職先の入社日と重ならないように調整することが大切です。
有期雇用契約は途中退職の扱いに注意する
契約社員など、雇用期間が決まっている場合は、無期雇用と同じように自由に退職できるとは限りません。契約期間の途中で退職するには、やむを得ない事情が必要になることがあります。
ただし、1年を超える期間の有期労働契約を結び、契約期間の初日から1年を経過した後は、一定の例外を除いて、労働者はいつでも退職できるとされています。契約期間、契約更新の有無、退職に関する規定を確認し、判断が難しい場合は会社の人事担当者や公的な労働相談窓口に相談してください。
退職を伝える前に確認すること
転職先が決まっている場合でも、次の内容を確認してから現在の会社へ退職を伝えます。
- 転職先の入社日が確定しているか
- 労働条件通知書や雇用契約書を受け取っているか
- 勤務地、給与、雇用形態、試用期間に認識の違いがないか
- 現在の会社の就業規則にある退職の申出期限
- 残っている有給休暇の日数と取得希望日
- 引き継ぎに必要な期間
- 退職日と転職先の入社日が重ならないか
転職先から内定通知を受けただけで、雇用条件や入社日が明確になっていない場合は、退職の申出を急がない方が安全です。少なくとも、入社日と主な労働条件を確認してからにしましょう。
退職を伝えるときの手順
退職の意思は、まず直属の上司に伝えます。いきなり退職届を人事部へ提出するのではなく、上司に面談の時間を取ってもらい、退職希望日と引き継ぎの予定を相談するのが一般的です。
- 就業規則と雇用契約書で、退職の申出期限を確認する。
- 転職先の入社日、有給休暇、引き継ぎ期間をもとに退職希望日を決める。
- 直属の上司に「退職について相談したい」と面談を依頼する。
- 面談で退職の意思、退職希望日、転職先の入社予定日を伝える。
- 会社の指示に従い、退職届や社内書類を提出する。
- 業務内容、取引先、進行中の仕事、保管場所などを整理して引き継ぐ。
- 健康保険、年金、雇用保険、源泉徴収票などの退職手続きを確認する。
伝えるときは、「一身上の都合により、○月○日をもって退職したいと考えています」のように、退職の意思と希望日を簡潔に示します。転職先の会社名や退職理由を詳しく説明する義務は通常ありませんが、引き継ぎや入社日の調整に必要な範囲で説明すると話し合いが進みやすくなります。
退職届はいつ提出する?
退職届を提出する時期や書式は、会社の規定によって異なります。多くの場合は、上司に退職の意思を伝えて退職日を相談した後、会社指定の書式または一般的な退職届を提出します。
会社が退職日を承認する形式なのか、本人の申出によって退職日が決まるのかも確認しましょう。退職届を提出する前に、記載する退職日について上司や人事担当者と合意しておくと、日付の食い違いを防げます。
会社から強く引き止められても、退職の意思が変わらない場合は、退職希望日と引き継ぎ内容を落ち着いて伝えます。退職日を一方的に後ろ倒しにすると転職先の入社日に影響するため、変更が必要になった場合は、先に転職先へ相談してください。
有給休暇は退職前に使えるか
残っている有給休暇は、退職日までの在籍期間中に取得できます。たとえば、3月31日が退職日で、3月18日から3月31日まで有給休暇を取得する場合、最終出勤日は3月17日になります。
ただし、業務の引き継ぎが必要な場合は、取得時期について会社と調整します。会社は事業の正常な運営を妨げる場合に有給休暇の時季を変更できることがありますが、退職日を過ぎた日に変更することはできません。
有給休暇の日数が多く、すべて取得できるか分からない場合は、早めに上司と人事担当者へ日程を相談してください。未使用分を会社が買い取る扱いは、会社の制度や個別の事情によるため、当然に買い取ってもらえるとは考えない方がよいでしょう。
退職から転職先への入社までに必要な手続き
転職先にすぐ入社する場合でも、健康保険、厚生年金、雇用保険、税金に関する書類を確認します。会社間で引き継がれる手続きもありますが、書類を自分で提出するものもあります。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 健康保険 | 転職先の健康保険に加入する日、現在の健康保険証等の返却方法、空白期間がある場合の手続き |
| 厚生年金 | 転職先で厚生年金に加入する日。入社まで期間が空く場合は、国民年金の手続きが必要になることがあります |
| 雇用保険 | 転職先へ提出する雇用保険被保険者証の有無。離職票が必要かどうか |
| 所得税 | 前職の源泉徴収票を転職先へ提出できるか。年末調整に間に合わない場合の確定申告 |
| 住民税 | 退職後の残額を給与から一括徴収するか、普通徴収に切り替えるか |
転職先の入社まで期間が空く場合
退職日の翌日から転職先の入社日まで期間が空く場合は、その期間の健康保険と年金をどうするか確認が必要です。健康保険は、現在の健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の扶養などの選択肢がありますが、加入条件や保険料は人によって異なります。
年金については、転職先で厚生年金に加入するまでの期間、国民年金への切り替えが必要になることがあります。退職日と入社日が決まったら、住んでいる自治体や年金事務所、現在の健康保険者に必要な手続きを確認してください。
退職日の翌日から転職先で働く場合
退職日の翌日が転職先の入社日であれば、健康保険や厚生年金の空白期間は通常生じません。転職先の担当者から求められた書類を提出し、前職の健康保険に関する返却物を現在の会社へ返します。
ただし、入社日が休日の場合や、社会保険の資格取得日が入社日と異なる場合があります。保険の切り替え時期は、転職先の人事担当者に確認してください。
退職時に受け取る書類と返却するもの
退職時には、転職先や公的手続きで使う書類を受け取り、会社から借りているものを返却します。
受け取る可能性がある書類
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 年金手帳または基礎年金番号が分かる書類
- 退職証明書
- 健康保険資格喪失証明書
転職先が決まっていて、すぐに働き始める場合は、失業給付を受けるための離職票が必要にならないことがあります。ただし、転職先に提出を求められる書類や、退職後の空白期間の手続きによって必要書類が変わるため、不要だと決めつけずに会社へ確認してください。
返却するもの
- 健康保険の資格確認書など、会社を通じて交付されたもの
- 社員証、入館証、名札
- パソコン、スマートフォン、鍵などの貸与品
- 制服や業務用の備品
- 会社の資料や顧客情報が入った記録媒体
退職後も、在職中に知った顧客情報や会社の機密情報を無断で持ち出したり、転職先で利用したりしてはいけません。データの返却や削除についても、会社の指示に従います。
転職先が決まっているときに避けたい伝え方
転職先への入社が確定していないまま、現在の会社に退職を伝えるのは避けましょう。内定の取消しや入社条件の変更が起きた場合、退職後の生活や手続きに影響するためです。
また、同僚へ先に伝えると、上司や会社が正式に把握する前に情報が広がることがあります。最初は直属の上司へ伝え、その後の社内周知は会社の指示に従うのが基本です。
引き継ぎを理由に退職日を無期限に延ばす必要はありませんが、転職先の入社日を優先して突然出社しなくなるのも適切ではありません。退職日までに完了できる業務と、後任へ渡す内容を一覧にして、現実的な計画を作ります。
転職先が決まっている場合の判断ポイント
退職を伝える前に、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 転職先の入社日と労働条件が書面で確定しているか確認する。
- 現在の会社の就業規則と雇用契約書で、退職の申出期限を確認する。
- 入社日から逆算して、退職日、引き継ぎ期間、有給休暇の取得日を決める。
- 直属の上司へ退職の意思と希望日を伝える。
- 退職届、健康保険、年金、税金、転職先へ提出する書類を確認する。
最初に行うことは、転職先の入社日と労働条件を確認し、現在の会社の就業規則を読むことです。そのうえで、無期雇用なら余裕を持って1〜2か月前を目安に上司へ相談し、有期雇用なら契約期間中の退職条件を確認してください。







