退職後に扶養に入るには、主に健康保険の扶養と税金上の扶養の条件を満たす必要があります。健康保険では、退職後の今後1年間の収入見込みが原則130万円未満であることなどが基準です。一方、税金ではその年の1月から12月までの所得で判定するため、退職前の給与も含めて考えます。
退職後に扶養に入る主な条件
会社員や公務員の配偶者などが加入する健康保険の被扶養者になるには、一般に次の条件を確認します。
- 扶養に入る人が、健康保険の被保険者の配偶者、子、親など対象となる親族である
- 扶養する人の収入で主に生活している
- 退職後の収入見込みが基準額未満である
- 自分自身が勤務先の健康保険に加入する条件に該当していない
- 同居・別居、仕送りの有無など、健康保険が定める条件を満たしている
具体的な認定基準は、扶養する人が加入している健康保険組合や協会けんぽによって確認が必要です。健康保険の扶養に入れるかどうかは、配偶者の勤務先を通じて申請し、加入先が審査します。
健康保険の扶養は「今後の収入見込み」で判断する
健康保険の扶養は、税金のように単純に前年の収入だけで決まるのではなく、原則として扶養に入る時点から今後1年間の収入見込みで判断します。
一般的な基準は、年間収入が130万円未満です。ただし、60歳以上または一定の障害がある場合は、年間収入180万円未満が基準となることがあります。収入には、給与だけでなく、雇用保険の基本手当、年金、傷病手当金、出産手当金などが含まれる場合があります。
年間収入のほかに、次のような条件も確認されます。
- 扶養する人と同居している場合、収入が扶養する人の収入の半分未満であることが目安になる
- 別居している場合、仕送り額より収入が少ないことなどが求められる場合がある
- 勤務先で自分が健康保険・厚生年金の加入対象になっていないこと
130万円未満でも、勤務先の規模や労働時間などによって自分の勤務先の社会保険に加入する条件に該当する場合は、配偶者の扶養には入れません。反対に、退職後に収入がほとんどなくても、必要書類を提出して認定を受けなければ自動的に扶養へ切り替わるわけではありません。
退職前の給与は健康保険の扶養判定にどう影響するか
退職前に受け取った給与は、通常、退職後の健康保険の扶養判定で見る「今後の収入」とは分けて考えます。退職して今後の給与収入がなくなることが明らかなら、退職日の翌日以降の収入見込みをもとに判定されることがあります。
ただし、健康保険によっては退職前の給与明細や雇用保険受給資格者証などを提出して、退職後の状況を確認します。退職金の扱いも健康保険によって異なる可能性があるため、退職金を受け取る場合は加入先に確認してください。
失業給付を受ける場合は扶養に入れないことがある
退職後に雇用保険の基本手当、いわゆる失業給付を受ける場合、基本手当の日額によっては健康保険の扶養に入れないことがあります。
一般的には、基本手当日額が3,612円以上の場合、年間収入が130万円以上になる見込みとして扱われることがあります。60歳以上などで年間基準が180万円の場合は、5,000円以上が目安になることがあります。ただし、待期期間や給付制限期間をどう扱うかは健康保険によって異なります。
失業給付を受ける予定がある場合は、次の書類を用意して扶養する人の勤務先に確認します。
- 雇用保険受給資格者証
- 基本手当日額が分かる書類
- 退職証明書または離職票
- 健康保険の被扶養者認定に必要な申告書
失業給付の受給が始まる前は扶養に入れ、受給開始後は扶養から外れるという扱いになることもあります。受給終了後に再び扶養へ入れる可能性もあるため、受給開始日と終了日を記録しておきましょう。
税金上の扶養は、健康保険の扶養と別に判定される
税金では、健康保険のように「扶養に入る」という手続きをするのではなく、扶養する人が配偶者控除や配偶者特別控除を受けられるかを判定します。判定には、退職した年の1月から12月までに受け取った給与やその他の所得が関係します。
そのため、退職後の収入がなくても、退職前の給与が一定額を超えていると、その年は配偶者控除の対象にならないことがあります。
| 判定するもの | 主な基準の考え方 | 見る収入の期間 |
|---|---|---|
| 健康保険の扶養 | 今後1年間の収入見込み。一般に130万円未満が目安 | 扶養に入る時点以降 |
| 税金上の配偶者控除など | その年の所得が基準以下か | 1月1日から12月31日まで |
雇用保険の基本手当は、税金上は非課税として扱われますが、健康保険の扶養判定では収入に含まれることがあります。この違いから、税金上は控除の対象でも、健康保険の扶養には入れない場合があります。
退職後に扶養へ切り替える手続き
扶養に入れる可能性がある場合は、退職後の健康保険が切れないよう、次の順番で手続きを進めます。
- 退職日と健康保険の資格喪失日を確認する。通常、資格喪失日は退職日の翌日です。
- 扶養する人の勤務先に、健康保険の被扶養者にしたいことを伝える。
- 退職証明書、離職票、健康保険資格喪失証明書、収入が分かる書類など、勤務先から案内された書類をそろえる。
- 雇用保険の基本手当を申請する場合は、受給資格や基本手当日額を申告する。
- 扶養認定の結果を確認し、認定されなかった場合は国民健康保険や任意継続被保険者制度などを検討する。
扶養の申請中でも、前の健康保険の資格を使い続けられるとは限りません。退職後に病院へ行く予定がある場合は、どの健康保険を使える状態かを先に確認してください。
扶養に入れない場合の健康保険
扶養の条件を満たさない場合は、主に「国民健康保険に加入する」「退職前の健康保険を任意継続する」「再就職先の健康保険に加入する」という選択肢があります。
任意継続は、退職前の健康保険に一定期間継続して加入していた人が利用できる制度です。申請期限や保険料は制度ごとに決まっているため、退職前の健康保険者に期限を確認してください。国民健康保険の保険料は自治体や前年所得などで異なります。
どの制度を選ぶかは、扶養認定の可否だけでなく、失業給付の有無、世帯の所得、任意継続の保険料、国民健康保険の保険料を比較して決めます。
退職後の扶養を判断するときの確認ポイント
まず、扶養する人の健康保険に「退職後の収入見込み」と「雇用保険の基本手当日額」を伝え、被扶養者になれるか確認してください。そのうえで、税金については退職した年の給与総額をもとに、年末調整や確定申告で配偶者控除などの対象になるかを確認します。
- 退職日と健康保険の資格喪失日
- 退職後の給与、アルバイト収入、年金などの見込み
- 失業給付の受給予定と基本手当日額
- 自分の勤務先で社会保険に加入する可能性
- 退職した年の1月から12月までの給与・所得
- 扶養する人が加入している健康保険の独自基準
健康保険は退職後の収入見込み、税金はその年の所得で考えるのが基本です。退職後に扶養へ入れるかは、130万円未満という目安だけで決めず、失業給付や勤務先の社会保険加入条件も含めて、扶養する人の勤務先へ申請前に確認しましょう。







